lainが怖い話と2023年の自分

当エントリは serial experiments lain Advent Calendar 2023 6日目に突貫で参加させていただいた記事となります。
今年はAdCの時期に何かできるかな (≒あまりに気分屋ゆえ注目しているコンテンツのメインストリームがlainである時もさほど多いワケではない) ……と思っていましたが、3日目の記事 を拝見していて「何を言ってるんだお前はlainに多大な影響を受けてるんだろう」と囁いてくるボクもおり、やはりここは筆を取りたいと感じるに至りました。
件の記事を描いてくださったdarzさん、また毎年lainAdCを企画してくださっているくろぐろさん、他素敵な記事や創作物を公開されている皆さん、いきなりですがこの場をお借りし改めて感謝を申し上げたいと思います (旧Twitterとはもう日常を共にする気がなくなっているので、せめてこういう場で……) 。

本当は新たな考察などもがっつりやりたいと思いつつ (AdC初年度から言ってるので今のところやるやる詐欺と化してはいますが) 今年もちょっと思い出話寄りの記事になっちゃいそう。
お付き合いいただける方は何卒よろしくお願い致します。

白状すると

25周年を迎え、AI lainのように (少なくとも個人的に昨年時点ではまだ) “朧げだったハズの近未来” が急速に実現していき、「本当にこんなメディア展開が出てくるとは」という驚きが少なくなかった今年。
ネタには事欠かず、ボク自身それらを確認してはしばしば一人感嘆していましたが。
何だかすごいことになっているなあ、というか……

あのlainがここまで話題になっていいのか?

そんなある種の戸惑いが芽生えてきたのを感じていました。

ここではっきり明言しておきますが、少なくとも「lainは多くの人に触れられていい (あるいは触れられるべき) 作品である」と考えてきましたし、今もそう考えています。
間違っても、これは「ワイヤードの最果てで語られていたハズのlainが衆目に晒されていくのが不満」とかではなくて。
そういった扱いを受けてきたのも内容が内容ゆえであろうこの作品が「話題になって大丈夫なのか」の意。

もう一つ白状すると

柊子さんがそうだったように、人は心の隙を突かれてしまえばいとも容易く自律の土台たる精神を失ってしまう。
ボク自身 (あれほどはっきりと自分自身の根幹を揺るがされた経験はないにせよ) 色々な意味で「疲れた」と感じることはありますし、そういった時はゲーム版の玲音の主張に必要以上の甘美さを感じ取ったことも数ありました。
言ってしまえば “始まり” を迎えたいとぼんやり願ったことすらも。2019年にちょうどlain TTLが発表された頃とか「これが一区切りする2028年には、もう自分はもしかしたら……」なんて考えたりもしていました。
(今はこの話を良くも悪くもネタにしつつ、懐かしみながら書いていますよ!)

昨年の記事で「玲音は怖いワケじゃない」と書きましたが、lainの物語 (特にゲーム版) はやはり結構怖い。
ホラーの超常的恐怖ではなく、現実に通用し得るロジックで受け手側の精神を揺さぶってくる恐怖は、ファンであるボク自身も頻繁に身を置きたいモノではない。
玲音という人物ではなく、”そう考えることもできてしまう理屈” を、第四の壁を破った延長上に孕んでいるのが、リアリティに裏打ちされた説得力を抱えていて一番怖いのだと、そう思うのです。

玲音は玲音

……ちょっと前項を書いていて久々に言い知れぬ恐怖を思い出してしまったので、自分に言い聞かせるのも兼ねて。

アニメ版のlainは8話で「あたしはあたし」と述べていました。玲音は言うまでもなく、ゲーム版の人物像が全てではない。
同様に、ゲーム版で提示されたロジックも答えの1つであれ、唯一解ではない。
作品についてとことん考える人ほど、PSlainに触れた時根っこから変わり果てていきかねない危惧を、(一応所持者&プレー経験者として) 身を以て経験しかけているために、このコンテンツが広まっていって大丈夫なのかと考えることも出てきてしまいましたが、自分が思想的にゲーム版の影響を受けすぎているだけで、まあ多分大丈夫なのだろう、と心を落ち着かせられるよう努めたりしています。

にしてもそう考えると、ゲーム版が今プレミアついててハードル高くなってるの、ある意味では本当に良かった……のかも?

終わりに

こんなこと言いつつ、ボクはファン活動をする身でもあるので、PS版lain25周年に件のオルゴールのFC音源アレンジを公開しました。
アニメ版の25周年には何かする気力も出ていなかったので、とりあえず良かった。

TLC · serial experiments lain (PS) Main Theme - FC / NES arrangement -

それに今回、素敵なイラストも描いていただいたもので!いやはや本当にありがたやありがたや……
このアレンジは元々オンライン上のクローズドなイベントでlainの曲を流したい、聞いてほしいからと作ったモノだったんですが、そこ以外だとグレードアップ前の盤を実機から収録してDiscord鯖にそっと流したくらいで、このアレンジ自体はそのまま日の目を見ない可能性もあったモノでした。
ちゃんと形にすることが出来て本当に良かった良かった (2回目) 。
lainが公開されてから25年経った次は、来年ボクがlainを知ってから丸10年。これからも、こんな感じでマイペースにやっていきたいと思っています。機会がありましたら、またどうぞ見てやっていただければ。

Written on December 6, 2023