25252 〜アニメ『ラブライブ!』の裏主人公〜

 3つ目のエントリーでも触れましたが、ようやくこのエントリーを書くことになりました。
 25252。
 にっこにっこにー。

 ということで今回は、ボクがアニメ『ラブライブ!』(以降『ラ!』と表記します)を視聴する前から知っていた唯一のキャラにして、その主題を紐解く上で中核的な役割を持つキャラ・矢澤にこの主人公としての特性を、主人公の機能の1つ「主題の実行」という目線から見ていきます。
 エントリーのテーマ上、今回は一見して彼女びいきの記事になるため、「穂乃果が(主人公|μ’sのリーダー)だろ!」とか「かよちんはどうしたかよちんは!」などと口走りそうになる衝動を抑える自信のない方はぜひブラウザバックをお願いします。μ’s目線で見れば、1期6話や2期5話で言及された通り「μ’sは全員でセンター」という認識も自分自身ちゃんと持ってはいますので。

矢澤にことはどんな人物なのか

 いきなりこんなこと言ってますけど、この記事を読んでくださる方は絶対大体のことをご存じですよね。たぶんアニメを見て1ヶ月経ってない自分なんかより知ってるハズ。というワケで、自分から変に詳しく紹介することは特にしません。一応ご存じない方向けにはニコニコ大百科ピクシブ大百科のリンクを貼りますので、そちらをご参考に。
 「かわいいキャラ」だとか「苦労人」だとか「芸人」だとか言われていたりもしますが、本記事で最も重要となるのは「誰にも負けないほどアイドルとしての情熱と矜持を秘めている」点です。

矢澤にこと(スクール)アイドル

 1期5話である程度はっきりと明らかになりますが、にこにとってアイドルは少なくとも高校1年生の頃から憧れの対象であり、同時に夢や目標の類にも該当する概念。 その憧憬ぶりの強さは当時から、少なからず同じ志を持っていたハズのアイドル研究部の面々でさえも置き去りにしてしまうほど。 また、記念すべき1期1話でも、音ノ木坂廃校の危機に際し、生徒を集めるための鍵としてUTXを訪れた穂乃果に、スクールアイドルやA-RISEの存在を説いてもいます(少し脱線しますがこのシーン、凛の言葉を振り切りつつ花陽がモニターのA-RISEに向かって脇目も振らずに走るくだりがあり、後に明らかになるアイドルへの熱量の描写を先行公開していて痒いところに手が届くものになってもいたり)。 このあとも彼女は活動の場所として自らの部を提供するようになったり、6話ではリーダーの有無などを通じてアイドルの常を説明したり、1期終盤でμ’sが解散の危機に瀕したときは一番に怒りの表情を見せたり。 この項では割愛しますが、2期でも同様に要所要所で「アイドルかくあり」という趣旨の言葉を率先して口にします。 とにかくアイドルに関しては異様にプライドが高く思い入れが強いのです。
 こういった描写から、μ’sの物語が動き出した時からにこは常にアイドルとしての牽引役の1人であり続けた、ということはよく分かっていただけるかと思います。 では、これを踏まえて次の項へ。

アニメ『ラ!』における主題と、それに大きく関与する人物の変遷

 『ラ!』の主題はシーズンに寄って若干の差がありますが、当然ながら「スクールアイドル(そのものはもちろん、向き合う思いやそれを通じて輝くこと、新しいフェーズへと進むこと)」という主題はあると言えるでしょう。 また、1期であればそこに「廃校阻止」という目的も加わってきたりします。これも物語の中核を担いますから、1期においては主題として差し支えないハズです。
 というワケでこの2つに関与している人物を考えてみますが、もうお分かりいただけるでしょうか。 先に示した通り、1つ目の主題「スクールアイドル」を徹頭徹尾率先して体現している人物としては、矢澤にこの名前を真っ先に上げることができます (実際のところは、A-RISEに感銘を受けて無自覚にスクールアイドルへの意識を保ち続けていた穂乃果も含めることができるでしょう。これに関しても追い追い説明していきます)。 一方、2つ目の主題「廃校阻止」の担い手には穂乃果と絵里が該当することになります。 これは廃校の知らせを受けてすかさず行動し始めたのがこの2人であり、他のメンバーはこの主題に関して便乗している側であることから言うことができます(更に言うと1期1話Bパート、それぞれ異なる場所で行われるやりとりの中では穂乃果と絵里がアップになるカットが多く、これを強くさせる目的があるとも言えるでしょう)。
 そして鍵になるのは、1期12話と13話。
 先ほどは簡便のために「廃校阻止」を1期のテーマとしましたが、正確に言えばこれは12話途中で打ち止めになります。 この2つのエピソードでは、絵里曰く「いずれぶつかる問題」であった、廃校阻止を成し遂げた先の目標について触れられることになったのでした。 穂乃果は一連の出来事を通じて「アイドルをやりたいという思い」を再確認していくと同時に、心が揺らぎながらも留学の道へと進んでいくことしかできなかったことりを、持ち前のワガママで迎えに行くことになりました。

1期終盤で己が姿勢を貫いた矢澤にこ

 さて、ここで矢澤にこの主人公性に関して注目すべき点は2つあります。
 1つは「物語における主人公の役割」の1つである「主題の実行」という目線で見ると、この間実行可能な主題は「スクールアイドル」1つしか存在しなかった点。 もう1つは思い悩む穂乃果に対してさまざまな人物が声をかける中、他でもないにこが穂乃果のアイドルへの思いを「いい加減な”好き”」と評していた点。 実際にはいい加減ということはなく、穂乃果のスクールアイドルにかける思いは本来廃校回避後も揺るがないものであっただろうということを海未が解き明かしていますが、12話13話の時点であれば流石にその熱量としては、アイドルそのものと常に向かい合い続けてきたにこに及ぶべくもありません (穂乃果がスクールアイドルとしての熱意を自覚し、その主題を完全に果たせるようになっていくプロセスは、寧ろ他のメンバーと同じく2期で重点的に描かれますし)。 加えて、穂乃果が迷い続ける中でもやはり、穂乃果に対するにこの叱咤は一貫してスクールアイドルの立場に則ったものだったのでした。
 
 端的に言うと、この間も含めて全編を通じ、矢澤にこは唯一「スクールアイドル」という主題を先導的に実行し続けていたのです。
 これが、矢澤にこを裏主人公として位置付ける所以です。

ついでに

 すっかり長くなってしまいました。 矢澤にこという人物が興味深いキャラだとシンプルに言えばいいものを、どうしても長々と駄文にしてしまう、そういう癖は全くなくなる気がしません。 やはり話題作になるだけあった『ラ!』には、言いたいことも山のように出てきました。 特にどれだけ捻くれてもアイドルとしての矜持を失わなかったり、2期11話で”メンバーが入れ替わってもグループは続く”という自らのアイドル論(に隠れたμ’sへの思い入れ)の提示も虚しくμ’sの活動終了が決定し、そのあと涙のフルバーストシーンで最後に泣いたのが彼女だったりした辺り、本当に気丈に振る舞い続けたんだという強さがありありと伝わってきたっけ。 あれは芝居として非常に好きだったりします。 『ラ!』に対して、個人的にはまだまだコンテンツとして没入の難しいところもありますが、考察に足り得る面も非常に多く見受けられるので、今後も何かしらのエントリーやSSを書けたらいいかなーと。 書くとしたら自分のハマり方からして次は東條希についてのことになるハズなので、にこよりずっと重労働になってしまうけど。
 
 というワケで、今回はこれにて。

Written on August 19, 2016