2019年2次創作回顧録

ボクは今年1年間で、2次創作に対する向き合い方が大きく変わりました。
ほうぼうで語り、また当ブログでも頻繁に記事として書いてきたほど、思い返してみればしんどくあり、でもやっぱりちゃんと楽しくもあり。
そんなボク自身の言動を(いつも追っている酔狂な方はそうそういないと思いますが万に一つでもいらっしゃればすみません、そしてありがとうございます)、個人的に見返そうとしてこんな年の瀬にようやく気づいてしまいました。
結構とっ散らかっているなー、と。
そんなワケで索引の意味も込めて、簡単に今年書いた2次創作やそれにまつわるエントリを、小話を添えつつまとめていきたいと思います。
書いたSS作品の中身に関わる話はしない……ハズですが、執筆したSSに対するボク自身の所感が勢いで混じってしまう可能性はなきにしもあらずです。その場合は、作者個人の見解であり当該SSにおける解釈の正解を示すモノではないことを念頭に置いてご覧いただけると。

『ステラのまほう』と『なんどでもゆめみてる』と『Psilanthropy』と『DADA』と……

のっけから割と重いやつです。
好きな作品ではありつつも、ボク自身があまり積極的に2次創作をするカテゴリには入っていなかった『ステラのまほう』。
その中でも屈指――それこそ一時は無限とも思えたほどの深みをもって描かれてきた特異点・百武照の合同誌に、よりによって参加してしまいました。
合同誌自体は個人的に本編もかくやと感じるほどの濃密さで、今思い返しても参加して良かったとにんまりしています。
一方で本作、時折「こういう展開がこの先あります」と直々にお達しが来る作品でもあ(るらしく)って。
物語をできる限り前情報なしで楽しみたいボクは、それをやられると結構テンションが下がりますし、それが2次創作をやりたくなるカテゴリに入らない理由にも繋がっています。
そして、ボクのようなファンは少数派なもので、お達しの後は界隈が大いに盛り上がり、情報がツイッターに流れてくる。
難儀なもんです。ボク自身はそれを完全に防ぎ切る方法が見出せていない(ミュートを駆使しようにも話題は界隈の方々ですぐさまシェアされ、しかも多様な文面で語られてしまうため、ユーザーや単語単位で見たいポストとそうでないポストを選別する上手いやり方の見当がつかない)から。
なので、今年の書き初めの原典でありながら、2次創作に関する苦悩をずっと引き摺り続けたきっかけともなる作品になってしまいました。
まあ、創作の悲喜交々を非常にリアルに描いている作品ですし、ボク自身のスタンスを見直すきっかけになった意味では、これ以上ないほどぴったりだったかもしれません。
ただ……これをご覧になった方の中に、こういった場合においてボクが見たくないポストを弾くベストプラクティスが浮かんだという方がもしいらっしゃれば、ツイッターのほうでお伝えいただけると幸いです……

ところで『Psilanthropy』に関して一つ。
ツイッターでも過去に言及した通り、タイトルは慈善活動(philanthropy)ではありません。今となってはある意味こっちのほうが良かった気もしなくはないですが、宜しければお間違えなきよう。

関連:
百武照合同『なんどでもゆめみてる』 (C96にて頒布 / 主催: 藤秋すばるさんのBOOTHにて購入可能な電子媒体)
『DADA』 (百武照合同に寄稿する候補だったもう一方のSS)
ボクが気に止めた作品の見方:『ステラのまほう』編
「百武照は百武照」:『なんどでもゆめみてる』各作品と全体の所感

『serial experiments lain』と『ラブレター。』

2次創作の視点で『lain』を語るなら、今年はやはり絶対に外せない件が1つありましょう。

「serial experiments lain Time To Live 2019 - 2028」略して「lainTTL」。
ご存知でない方向けにかい詰まんで説明すると、今年から10年間『lain』の2次創作を個人や同人の場において公式に許可する、という趣旨の声明です。
ボクの好きな作品でこういった発表がなされるのはもちろん嬉しいんですが、正直そんなのは優に通り越して結構吃驚しました。
何でかってこの『lain』、アニメとゲームがそれぞれ1998年に発売されて、既に公式には物語が展開を終えている作品です。
2次創作が公式に認可されている作品はこのご時世もう割と珍しくないですが、本作は21年の時を経てそれが認められたワケです。

そりゃもう、発表当日に(めちゃくちゃ短いですが)2次創作が1つ完成してしまうくらいに沸き立ちましたとも。
ボク個人の創作だけでなく、創作論そのものにまで多大な影響をもたらした本作。もう少しばかり大掛かりな形で、いつか恩返しができたら良いもんです。
『lain』に限って言えば今は胸を張って2次創作ができますからね。

……ところでボクがAdCに参加した記事のほう、今気づいたけど曲紹介のハズがいつの間にか段々作品紹介にシフトしてやがるな。あとでちゃんと修正しとこ。

関連:
serial experiments lain Time To Live 2019 - 2028
『ラブレター。』 (lainTTL発表当日にできた2次創作)
玲音と「手紙」 (serial experiments lain AdC 8日目の参加記事)

『スローループ』と『絆の証は合わせて3つ』と……

『スローループ』の2次創作SSは今年1年で4本書いており、それぞれに言及していたらきりがないのでpixivをご確認ください。
で、とりわけ本編をご覧になっている皆さんに、ボクがこの項で言いたい主張が1つ。

本編の “隙間” は読むモンじゃなくて想像するモンですよ、読むのは本編そのものだけで充分なんだから本編と “隙間” に詰まった中身をきっちり筋道立てて繋げられるように読めたら良いですね。

あ、 “隙間” が何を意味するかピンとこなかった方は特に気にせず一緒に本作を楽しみましょう。
また本作未読の方向けには、弊ブログで以前公開した既刊の布教・感想記事を置いておきます。
素敵な家族であるために:『スローループ』=人×釣り×人
誰もが皆自分らしく手を繋げたら:『スローループ』2巻
↑興味をもたれた方はどうぞご参考に。

関連:
絆の証は合わせて3つ

『ローリング☆ガールズ』と『歩く花』

C97にて頒布される『ロリガ合同』に寄稿させていただいている本作。
後書きでも言及していますが、放送5周年を記念して企画が立った当合同誌、ボクもまた浅からぬ思い出があるということで参加するに至りました。
それは作品に対する思い入れももちろん、本作に触れたきっかけがきっかけだったから。
いてもたってもいられずに参加表明したおかげでSS外における個人的な反省もありますが……
それも込みで5周年の当日にまた本作や寄稿作品の小話を思う存分書き捲る所存です。

そういえば1周年の時にも、ロリガSSを1本書いてたんですよね。今のスタンスからしてみれば何で書けたんだろうと疑問が尽きませんが。懐かしいなー。今は、同人ながら本編と地続きのコンテクストでスピンオフ小説が描かれていますし、きっと矛盾が発生してるだろうな……
さておき、ボクみたいなモブの書いた文章が、記念すべき日を祝う一助になってればいいな。

関連:
ロリガ合同 (C97にて頒布 / 主催: 葉月光さんの告知ポスト)

『SHIROBAKO』と安藤つばき

『SHIROBAKO』では2次創作SSを執筆した経験がありませんが、2次創作をテーマに据えてAdCに参加させていただいたので本記事にも記載。

本放送時はムサニにおける「おいちゃんの後輩社員」くらいにしか認識していなかった登場人物・安藤つばきに今となっては感銘を受けており、それを元に記事を書きました。
が、ADVENTERから該当記事をご覧になった方のほうが多いだろうと予測し、無用な混乱を避けるために、実は1つ大事なポイントを意図的に掘り下げていません。

2次創作をやる上での「共感(欲)」がそれに該当します。
ボク個人は登場人物への共感をベースに2次創作を書くことはおろか、登場人物への共感そのものを本来的には忌避しています。
2次創作を意識せず原典に触れている時や、自分の書いた創作物を読み返している時はその限りではありません。しかし基本的にそうやって余計な感情を排し、原典とそこから解釈を導く際の論理を重要視してこそ理想的で有意義な作品が生まれる、とボクは信じてやまず、常に一歩引いた視点を取るように心がけ続けています。

そしてボク個人としては基本的に、2次創作者は原典の作者にそうそう関わってはならないと線引きをしてもきました。
この辺りのスタンスが考えなしに少し変わり、それゆえに苦悩したのも今年だったワケですが……
やっぱ安藤さんスゲーんだよな……

関連:
理解欲と共感欲:気づけば趣味の道の先にいた『SHIROBAKO』安藤つばきの話 (SHIROBAKO AdC 13日目の参加記事)
2次創作者は2次創作に触れて2次創作とその作者に大きく手を振る
原典への向き合い方と原作者への向き合い方

『こみっくがーるず』と「『暗黒勇者』の疑似パラドクス」と『弱い自分とたくさんの物語』と『Pratītyasamutpāda』と……

大トリは、やっぱり『こみっくがーるず』。
昨年夏に編かおを通じ陥落して以来、現在主に2次創作をやっている作品です。
各SSに言及していたらきりがないので、ここでは特に思い出深いSSを軸として2つピックアップします。
そして『こみが』に関する考察記事を書いたら、予想以上にそれ以降の作品へ影響を与えたのでそれについても色々と。

にしても『こみが』にハマったのがもう1年半前か……早いなー。
前述の通り一番思い入れがあるのは編かおというCPである関係上、今日に至るまで何本もSSを投稿してきました。
メインは当然一番好きなCPである編かおなんですが、一旦そこからは一歩引いて別作品のお話をしたい。

時系列順に並べると、『Pratītyasamutpāda』の構想が実は一番早くから存在していました。
ただその時は、姫子先生に関する物語を書こうとしてもエンドの目算が全く立たず、かなり長い間あたためてきた形でした。
昨年秋に書いた『真夏のソフトクリーム』が、ボクのこみが2次創作歴で最初期に姫子先生を主軸に据えようとした痕跡です。
今となっては上から数えるほうが早いほどお気に入りのSSですが、執筆時は割と不完全燃焼でもあったりしました。

一方で、姫子先生を語るとなれば高確率でついて回るのがV先生。
V先生に関しては、正直母親との間にある確執の解決が本編で描かれるだろうというか、そうじゃなかったら流石に……と予想しているため、かなり核心に近いと思われる解を導けていながら、実はそれを2次創作へと落とし込む熱意が今のところありません。
そんな消極的な経緯で書いたのが「勝木翼の置かれた世界と『暗黒勇者』の疑似パラドクス」。
とは言え当該考察を一記事にまとめた効果はかなり大きく、その後のSSは何かしらの形でそこへ右に倣えをしています。

そこから『大切にされる妹』を前哨戦とし、満を持して書き上がったのが『Pratītyasamutpāda』。
『真夏のソフトクリーム』ではCP(るきつー)ベースで姫子先生を見ていたのが、いつの間にかこうしてmiki先生を含めた描写に発展しつつ、本質としては姫子先生1人に切り込んでいく。
そもそも構想から執筆までが年を跨いだのも初のケースである上、ここまで紆余曲折を経て完成したSSに例がないだけに、思い入れも一入です。
特に「君の頭を触ることで初めて手の輪郭を知った」とか「君の話を聞いて初めて自分は何が好きでどういうことを考えているのかを知った」とか。
「そういう触れ合いの中で初めて人の声と形が意味をもつ」とか。
今ここにこそっと列挙した言葉は当該SS内に突っ込めませんでしたが、これらは作品を見る上で関係論指向なボクの中にも強く生きづいています。
また、仮題『DON’T LEAVE ME ALONE』も執筆中に聞いていた楽曲の1つから拝借していました。
結果、久しぶりに書いていて満足の行く仕上がりになったように思います。本当に楽しかった。

さて、一方の編かおSS『弱い自分と沢山の物語』。
総合的に見て一番言語化率が高い分、作品に関してここで言うことは特段なかったりします。
上げるとすればまず、完成順で100作目となるSSだった点でしょうか。
最も熱心に見てきたCPのSSで節目を迎えられたのは、素直に嬉しかったことです。
5巻で大人組の過去が語られ、編沢さんが実際に挫折した過去をもつと明らかになったのも執筆のブースターになったと記憶しています。
あとは『Pratītyasamutpāda』と対照的に、比較的場当たりな形で執筆を進めていった点。
着地点を決めずに執筆していくのは物語を第一発見者として見届ける意味で理想的ではあるものの、当然創作上のリスクも相応に付き纏います。
編かおの動きはいくらか慣れているのでさほど気負いもありませんでしたが、そんなスリルを越えて着地点を見つけ出せた時はやはり感極まるモノがありました。
やっぱり編かおは最高なんだよな。

関連:
勝木翼の置かれた世界と『暗黒勇者』の疑似パラドクス
誕生日
『弱い自分と沢山の物語』
『Pratītyasamutpāda』

ところでこれを書いてる今

どうも2次創作で炎上してる案件があるそうですね。勘弁してくれ。
まあめんどくせえなーって感じですが、来年も頑張りますのでご覧くださっている方はまた何卒。

Written on December 24, 2019